ひととして
農業・畜産事業
持続可能な農業と緬羊で、
地域資源の未来をつくる
自社飲食店で提供している野菜は、自社農園で栽培しています。農薬や化学肥料に頼らず、自然の力を活用して美味しい野菜を育てます。
2025年11月にオープンした未来の羊ファームでは食肉にするための羊を飼育し、増頭を目指しています。将来的には自社生産の羊をお客様に提供していきたいと思っています。
農園では羊の飼料になる牧草の栽培なども始めています。
まだまだ始まったばかりですが、地域の未来に貢献するために一歩ずつ進めていきます。




羊の牧場を作ろう
私たちは2007年より約15年間、「ポルチェリーノ」というイタリアンレストランを運営してきました。
料理と真摯に向き合い、日々お客様に「美味しい」を届けることに全力を注いできた時間でした。
そんな長年のレストラン営業を続けるなか、ある日、忙しい仕込みの合間に、シェフがふと口にした一言——
「羊の牧場を作ろう!」
最初は冗談のように聞こえ、思わず「は?」と返してしまったほどでした。
しかしその日から、シェフは羊の魅力や可能性、そして地域資源としての価値を熱く語るようになり、
その情熱は次第に周囲にも伝わっていきました。
「ただ美味しい料理を作るだけでなく、成田の未来につながる仕事がしたい」
「地域で羊を育て、その恵みを料理に変え、循環する仕組みをつくりたい」
長年続けてきたイタリアンレストランを手放してまで挑むことへの迷いがなかったわけではありません。
それでも、これまで培ってきた料理人としての経験を、次の形で地域に還元したい——
そんな想いを重ねるうちに、“自分たちで牧場をつくる”という無謀に見える挑戦は、
いつしか確かな目標へと変わっていきました。
ひとりの生産者との出会い
シェフが本気で「羊の牧場を作ろう」と決意した背景には、
山形にある『ひつじや』の西塚洋平さんとの出会いが大きく影響しています。
西塚さんは、自ら育てた羊を自社飲食店でジンギスカンとして提供している生産者兼料理人。
その羊肉を初めて口にした瞬間、私たちはそれまでの“羊肉の概念”がすべて覆されるほどの衝撃を受けました。
あまりの美味しさに、15年間守り続けてきたイタリアンレストランを手放してでも、
「自分で羊を育て、その肉を自分の手で提供したい」そう思わせるほどの出会いだったのです。
西塚さんの羊は、ホゲットやマトンへと成長してから生肉として提供されます。
輸入ラムとは全く別物ともいえる深い味わいがあり、羊の本当のポテンシャルを教えてくれました。
※羊肉は月齢で名称が変わります。

人脈ゼロからのスタート
私たちは長い間、店の中で仕込みと準備に追われ、営業を続ける日々でした。
気づけば外に出ることも少なく、人脈づくりというものをほとんどしてこなかったのです。
「牧場を作りたい」と思いながらも、協力者が圧倒的に足りない——その現実に直面しました。
そんなとき、「成田ロータリークラブに入会しませんか?」というお声がけをいただきました。
名前だけは知っていたものの、自分たちとはまったく違う世界の方々が集まる場所だと思い、正直かなり身構えていました。
それでも「あなたたちも仲間に」と言っていただけたことが嬉しく、勇気を出して入会を決めました。
入会時の自己紹介で「イタリアンを辞めてジンギスカンに転換し、羊の牧場を作りたいと思っています」
とお話ししたとき、きっと多くの方が「?」だったと思います。それでも、皆さまは温かく接してくださり、何も知らなかった私たちにたくさんの学びと人のつながりを与えてくださいました。
今では、この出会いとつながりこそが、私たちが成田で羊の牧場づくりに挑むための大きな原動力となっています。
拡がる羊の縁
「羊の牧場を作りたい!」——そう言い続けていると、不思議なことに少しずつ“羊の縁”が広がり始めました。
訪れたのは、空港近くにある『自給農園ミルパ』さん。そこには羊が2頭いると聞き、さっそく足を運んでみたところ、そこで出会ったのが羊100頭計画を掲げる石井恒司さんでした。
その2頭の羊は、多古町の岩渕牧場さんから譲り受けたものだと聞き、恒司さんの案内で岩渕牧場さんにも
訪問させていただきました。岩渕牧場さんは本来牛の牧場ですが、オーナーの趣味で羊を飼っており、
牧場には40頭ほどの羊が元気に暮らしていました。走り回る可愛い子羊たちの姿に、胸が熱くなったのを覚えています。
“千葉県でも羊はしっかり育つ”——その事実がわかった瞬間、私たちの中で迷いが一気に晴れ、「絶対に成田で羊牧場を成功させたい」という強い決意と希望が湧いてきました。

国内の羊肉事情
現在、日本で食肉用として飼育・出荷されている羊はわずか約1万5千頭しかいません。
その一方で、国内で消費されている羊肉のほとんどが輸入に依存しており、
●オーストラリア産+ニュージーランド産で約98%
●その他の国が約2%
●国産羊肉は1%にも満たない極めて貴重な存在 というのが現状です。
つまり、私たちが普段食べている“羊肉”のほぼすべては海外から来ており、日本の土地で育った羊のお肉はほとんど市場に出回っていないのです。
御料牧場に息づく、成田のジンギスカン文化
御料牧場は、明治8年に創設された下総牧羊場と取香種畜場を起源とし、明治18年に宮内庁の管轄となることで「宮内庁下総御料牧場」として本格的に歩みを始めました。
牧場では、馬・牛・綿羊・豚・鶏などの飼育に加え、バター・ハム・チーズといった畜産加工品を生産。農耕では牧草や野菜、穀類の栽培、植林などにも取り組み、地域の産業を支える大切な役割を担ってきました。
また宮内庁の施設として、天皇陛下や皇族方の行幸啓、在京外交団の招待行事なども多く行われ、その席では“ジンギスカン”がふるまわれることもありました。こうした歴史を背景に、成田には自然と“ジンギスカン文化”が根づいていったのです。
現在では、三里塚商和会の皆様や成田国際空港株式会社・地域共生部の皆様が中心となり、この文化を未来へとつなぐ取り組みが進められています。イベント開催や地域連携を通じ、かつて御料牧場で親しまれていた食文化を、地域の新たな魅力として再び花開かせています。
羊の研究者との出会い
「広島から三里塚に移住して、羊の研究をしている方がいるんだよ。」
そう紹介されて出会ったのが、この本の著者・山本佳典(けいすけ)さんです。
彼の代表作である『羊と日本人』は、日本の羊の歴史に深く光を当てた一冊です。
日本の近代史を振り返ると、戦争や貿易摩擦、不景気、震災といった大きな出来事のたびに、牧羊(緬羊:めんよう)は国策として掲げられながらも、何度も挫折を繰り返してきました。戦後には御料牧場を含む農地解放や産業構造の変化も重なり、その歩みは波乱に満ちています。
しかしその裏側には、逆境の中でも挑戦を続けた技術官僚や民間人がいました。信念をもって羊と向き合い、たゆまず努力を重ねてきた人々の姿――。
山本さんは、その“忘れられた日本の緬羊史”を、在野の若手研究者として独自の視点から丹念に掘り起こし、膨大な調査と聞き取りによって再構築しました。まさに渾身のノンフィクション作品です。
現在でも山本さんとは、羊の可能性や未来について意見交換を続けています。
羊の文化が再び広がってほしい――。
山本さんは、その願いを本気で抱いている数少ない研究者のひとりです。

羊がもたらす新しい可能性
羊を軸にした取り組みには、成田に多くの可能性があると感じています。
ここでは、その一部をご紹介します。
① 農地の新たな活用
成田市には農業放棄地や空港騒音地区など、十分に活用されていない土地が多くあります。こうした場所を羊の飼育地として活用することで、新しい畜産事業の展開が可能になります。さらに、後継者のいない農地を借りて牧草や穀物を栽培すれば、
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農地の有効活用
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羊の安定した飼料確保
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作業効率の向上
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雇用の拡大 といった効果も期待できます。
② 福祉との連携
羊と福祉を組み合わせることで、社会で生きづらさを抱える方々が安心して働ける環境をつくることができます。
「できることを、できる人が」
羊のように寄り添い合える仲間を増やし、誰もが役割を持てる場づくりを目指します。
③ 命と食を学ぶ教育施設づくり
羊の一生を通して命の大切さを学べる施設を整えれば、市内外の小中学校の社会科見学や、一般の方の学びの場として活用できます。
羊に触れ、食の背景を知り、命と向き合う体験は、成田の教育資源として大きな価値があります。
④ 羊を活かした新しい観光 “羊ツーリズム”
成田国際空港がありながら、市内を素通りされてしまう現状があります。
そこで、羊を活かした新しい観光産業――
『羊ツーリズム』
を展開することで、観光客の滞在を促し、地域に新しい魅力を生み出すことができます。
羊 × 企業 × 福祉 × 行政 × 観光 × 農業 × 個人 …
掛け合わせ次第で、可能性は本当に無限に広がります。
羊と関わってくれる“仲間” を募集しています
羊と過ごす時間には、土地の再生や循環型の農業だけでなく、人の心をほぐしてくれる不思議な力があります。
ひととしてでは、そんな羊たちとともに歩む活動に、さまざまな形で関わってくださる方を歓迎しています。
たとえば――
✅羊の餌づくりに使う野菜の葉や茎を分けてくださる方
✅週に少しだけ、羊のお世話を手伝ってみたい方
✅放牧地の整備や、羊とふれあえる環境づくりに興味がある方
✅羊や農の学びを広げるための活動に、ゆるやかに参加したい方
関わり方は “これが正解” というものはありません。できることを、できる形で。あなたのペースと興味のままに、羊たちとの輪に加わっていただけたら嬉しいです。
私たちが目指しているのは、羊を中心に、人と地域が優しくつながり合う未来。その一歩を、あなたと一緒に育てていけますように。ご興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
あなたとの新しいご縁を、羊たちとともにお待ちしています。

